今日のツアー行程は午後からのため、午前中はゆっくり過ごしたり近所のお土産屋さんを散策したりと、思い思いに過ごします。
そんな午前中、西本多美子さんと佐久間邦彦さんに協力いただき、議員にむけて被爆証言を実施しました。
NATO(北大西洋条約機構)に加盟するノルウェーは、日本と同じように「核の傘」に守られており、核抑止は安全保障上必要不可欠だと考える議員は少なくありません。

議員へ向けて被爆証言をする西本多美子さん
そのような中でも、粘り強く反核・核軍縮を訴える野党議員に向けて証言をした西本多美子さんは「ヒバクシャの声だけでは限界がある。私たちは国同士の話し合いに入れないので、やはりここは政府や議員が協力し、ヒバクシャの声を外交や核軍縮に役立ててほしい」と伝えました。
議員たちは「今回の証言を聞いて、改めて核兵器の恐ろしさを知り、人類とは共存できないと感じた。武力ではなく対話で解決するという、核軍縮への取り組みを強めていかなければ」と西本さんの証言に応える意欲を伝えてくれました。

佐久間さんに出会えた感謝を伝える議員
そして現地時間の2024年12月10日13時、いよいよノーベル平和賞授賞式が開催されます!
今回のツアーのメインイベントと言っても過言ではありません。
行動ツアー参加者はオスロ図書館の特設会場でパブリックビューイングを視聴しました。
授賞式が挙行される直前、パブリックビューイング会場と日本を繋ぎ、参加者の福島富子さんと浅野英男さんがオスロの熱狂具合を伝えます。

日本と生中継をする福島富子さんと浅野英男さん
授賞式は日本被団協の田中重光氏、箕牧智之氏、田中熙巳氏の代表委員3名が会場入りする場面から始まりました。
これまでの活動やその道を切り開いてきた多くのヒバクシャを思い出し、すでに涙ぐむ人も。
フリードネス委員長が日本被団協の活動と授賞理由を紹介し、賞状とメダルの授与が行われました。

パブリックビューイングを観るツアー参加者
その後、田中熙巳代表委員が代表スピーチを述べます。
自身の経験を通し原爆被害の実相や被爆による差別、世界中で行われた核実験、団体設立の歴史などを分かりやすく伝えたあと、「受忍論」(非常事態の国を守るために、受けた被害について国民は我慢し耐え忍ぶ)によって、原爆だけでなく空襲など戦争で受けた被害についていまだに国家補償はされていないという問題を訴えます。
分かりやすくも力強い言葉は、核廃絶運動に関わる多くの人の士気を高め、その士気は鳴りやまない拍手となって会場を包みました。
授賞式終了後、日本被団協代表団と行動ツアーメンバー全員で記念撮影をするため、国会議事堂前へと移動します。
この一瞬しか全員が集まれるチャンスはないと、タイミングを練りに練って各所からの移動がスムーズにいくよう全集中し、みんなで撮れた授賞式直後の記念撮影。凍てつく寒さの中でしたが喜びを分かち合えた瞬間です。

日本被団協代表団とツアー参加者全員での記念撮影
オスロにあるノーベル平和センターでは毎年、その年のノーベル平和賞受賞者・受賞団体をテーマとする特別展示を開催しています。
次の平和賞受賞者が発表されるまでの約1年間続くこの展示には、新たな受賞者の平和活動を、ノルウェー市民や国際社会に「教育」して「広める」役割を担っており、今回の受賞団体である日本被団協に関しても、オスロ市民のみならず、国内外から訪れる多くの人が、核兵器の歴史や被爆の実相に触れる機会となります。
今回ツアー参加者は特別に、一般公開よりも前に特別展示を解説付きで見学させてもらいました。

特別展示を参加するツアー参加者
今期の特別展示のテーマは「人類へのメッセージ」
世界にある核兵器の数の推移や、核実験が行われた場所や回数など核兵器の歴史が学べる展示のほか、被団協がかつて行った原爆被爆者調査をもとに被爆証言を聞いたり、被爆者ひとりひとりを表す1000個の木製のオブジェを手にとることができたりするコーナーもありました。
日本被団協に協力してもらい集めたヒバクシャの肖像写真の中には、実際にオスロを訪れた被爆者も。
自分の肖像写真と記念撮影をする姿も見られました。

自画像と記念撮影をする福島富子さん
陽が沈んだあとは、授賞式後の恒例となっているトーチパレードが行われます。出発前のセレモニーが始まると、多くのオスロ市民が集まりました。
スタート地点のノーベル平和センターからゴール地点のグランドホテルまでの約700mを30分ほどかけてゆっくりと行進し、道いっぱいにトーチの光があふれていました。
グランドホテルのバルコニーに日本被団協の代表委員3名が出てくるとパレード参加者の熱量は最高潮になり「ノーモア ヒロシマ ノーモア ナガサキ」の掛け声がオスロの夜空へと響き渡ります。

トーチパレードの様子
トーチパレードが終わると、ノーベル平和センターが招待してくれた夕食会へと参加しました。
この夕食会にはツアー参加者のほか、高校生平和大使、特別展示のデザインや準備に関わった関係者など総勢100名ほどが招待され、アジアや日本食をイメージした料理や手作りのデザートを楽しみました。ここまでの準備やおもてなしへの感謝を込めて森川高明さんが英語で感謝のスピーチを述べ、日本から準備した千羽鶴などを贈呈しました。

代表スピーチをする森川高明さん