2025年_ヒバクシャ地球一周(Voyage120)

ベトナムのハロンで、悲しみの共有から心の繋がりを築く

深圳寄港から2日後、陽気な音楽と獅子舞踊りに歓迎されながら、ベトナムのハロン港に寄港しました。

寄港した430日はベトナム戦争が終結してから50年を迎える特別な日。この日は国民の祝日として定められ、寄港したハロンに限らずベトナム国内で関連イベントが多く行われています。

今回、初寄港となるハロンを楽しめるよう、長年カウンターパートナーを務める枯葉剤被害者の会などのベトナム友好団体連合(通称:VUFO)がおりづるプロジェクトメンバーのために特別観光ツアーを実施してくれました。
まず訪れたのは、ハロン湾に生息する生物やクアンニン省の歴史や文化を学ぶことができる「クアンニン博物館」。休日ということもあり、多くのお客さんで賑わっていました。

クアンニン博物館前にて集合写真

次に名産品や多くのお土産が集まる「ハロン市場」を訪れ、地元に根付いた市場の雰囲気やお茶やせんべいなどの試食を楽しみました。

そして昼食も準備してくれていました。ベトナム名物のフォーや揚げ春巻きのほかにも、イカの丸焼きやフルーツなど、食べきれないほどの量でもてなしてくれました。

限られた時間の中でも最大限にハロンを楽しめるように、道中の車内でも町の歴史や、日本のODAとの協力によって建設されたハロン湾にかかる「バイチャイ橋」についてもガイドしてくれました。

特別ツアーのあとは、パシフィックワールド号の船内で開催されるイベントに参加します。

この船内イベントは二部構成になっており、第一部はベトナムの文化紹介、第二部は「Time for Peace -Writing the next chapter(平和の時 次の章を描く-)」と題し、ピースボートの川崎哲と長崎被爆者の倉守照美さん、元ベトナム副外務大臣で国連のベトナムの常駐代表を務めるグエン・フォン・ガ大使(Ambassador Nguyen Phuong Nga)NARPIのエグゼクティブディレクターのイ・ジェヨンさん(Mr.Lee Jae Young)4名が平和をテーマにしパネルディスカッションを行ないました。

このイベントは船内にいるお客さんも参加し、約200名ほどの人が会場に集まりました。

第一部は「ベトナム紹介」をテーマにベトナムの地形や気候、特産品のほか、ベトナム戦争に至った時代背景などが紹介されました。その中の民族衣装紹介の部分では、クルーズディレクターの田村美和子がアオザイを着用して登場するほか、会場に来ている方にベトナムのおやつが配られ、ショウガを使用したクッキーやココナッツの香りがするお餅などを楽しみました。

文化紹介に出演したクルーズディレクターの田村美和子(写真中央)

第二部は登壇者4名が「平和」をテーマにディスカッションします。

「原爆を体験した被爆者にとって平和とはなんですか」と聞かれた倉守さんは、父親が原爆症で亡くなってから生活が苦しくなり家族から笑顔が消えた経験を話し、「家族が健康で笑顔で過ごせる、そんな身近な当たり前の生活が平和だと思います」と答えました。
そしてグエン大使からベトナム戦争で多くの犠牲が出たことや、イさんの父親が戦争後に韓国に戻った話などを聞き「ツラい経験を話すのは簡単ではありませんが、伝え続け風化させないことが大事だと思います。そして体験者の生の声を聞いた人たちはそれがバトンだと思って周りの人に繋げてほしいです」と締めくくりました。

自分の経験を話す倉守照美さん(右から2人目)

会場には枯葉剤被害者の会のメンバーも来ており、生まれたときは特に問題なかったが成長するにつれてだんだんと枯葉剤の影響による障害が出てきたことや、自分は目が見えて耳も聞こえ自分の足で歩くことができるが障害が出た人の中には、目も耳も機能せずずっと寝たきりの人がいることなどを話しました。
そしてグエン大使も国連で常駐代表を務める経験から「持続可能な平和とは話し合うこと、対話し続ける重要性」を話しました。

9条プレートを渡す川崎哲

トークセッション終了後、船内イベントの締めくくりとして会場にいる全員が壇上付近に集まり「We are the World」を歌いました。共通言語が無くてもみんなが肩を組み笑顔でリズムに乗るその様子は、会場全体を温かい雰囲気で包み、人びとが国境を越えて心で繋がり、争いのない世界を体現しているようなひとときでした。

(文:橋本舞)

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