9月29日、コーチン市とピースボートが共同で発表した「核のない世界に向けたコーチン宣言」の全文は以下。
「核のない世界に向けたコーチン宣言」
人々に計り知れない苦痛を与え、空前の衝撃的な破壊力を人々の記憶に刻み込んだ広島と長崎への原爆投下から63年が経ちました。ピースボートによる「ヒバクシャ地球一周証言の航海」は、ヒバクシャの証言を伝え、核兵器が再び使われないために核兵器を廃絶しなければならないという普遍的なメッセージを共有するために、世界をめぐっています。その一環として今日、102名のヒバクシャと共にここインドのコーチンにやってきました。
ヒバクシャによる「ノーモア・ヒバクシャ、ノーモア・ヒロシマ・ナガサキ、ノーモア・ウォー」の訴えは、核兵器によってもたらされた残酷な苦痛と壊滅的な被害の上に作られた日本の平和憲法第9条の精神を体現したものです。この戦争放棄の条項に盛り込まれた非暴力の原則は、国際的に崇拝されるインドのマハトマ・ガンディーの非暴力の原則と多くの共通点を有しています。
市民社会と世界の指導者らの双方から、核のない世界への呼びかけは強まっています。ヒバクシャの声や高まりつつある核兵器の全面廃絶の必要性に関する国際合意は、核兵器の違法性を宣言し核軍縮の完了を求めた1996年の国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見などによって、その影響力を増しました。しかしながら、日本とインド両国の政府は、核抑止力が平和と安全保障の維持のためには欠かせないと主張しています。私たちはこの核兵器への依存を断ち切り、核兵器禁止条約の達成にむけて新しい流れを作り出していかなければなりません。
私たちは以下のことをインド政府に要求します:
● 包括的核実験禁止条約(CTBT)を署名・批准し、また兵器用の核分裂性物質の生産を終了することを通して、核兵器開発を凍結すること。
● ヒバクシャの声をはじめとした米印核協力に関する地球市民社会の懸念に耳を傾けること。最近の国際合意はインドの核武装の承認として受け止められるべきではなく、インドの負う核軍縮に対する責任が以前に増して重くなったものとして理解されるべきである。
● 核の交戦による破滅的な結果を防ぐために、近隣諸国と相互信頼を醸成すること。インドと近隣諸国間における平和的な対話を再開し、市民社会のよりいっそうの参加を推奨すること。
私たちは日本政府にも以下のことを要求します:
● ヒロシマ・ナガサキの経験を踏まえ、アメリカ合衆国の核の傘から離脱し、真の意味で日本の非核原則を実施していくこと。
● 東北アジアでの非核兵器地帯の設立を推進すること。
● 国際社会における平和構築の手段としての憲法9条の意義を認識し、この精神をいかして、核に依存しない安全保障枠組みを構築していくこと。
さらに私たちは、核のない未来のためには市民社会の努力が不可欠であることを認めます。よって私たちは、日本とインド、そして地球規模の市民社会の連帯を呼びかけます。
● 平和教育および軍縮教育を促進すること。これにはヒバクシャの経験を現代の世代から未来の世代へ語り継いでいくことが含まれます。
● 平和市長会議を支援、拡大し、2020年までに核のない世界を達成することを目標に掲げた同会議による「ヒロシマ・ナガサキ議定書」を推進すること。
● 武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ(GPPAC)をはじめとする軍縮や紛争予防のための国際的なネットワークに参加し、その強化に努めること。
● 日本の平和憲法第9条の非暴力の原則を普遍化するために行われている市民社会活動を継続すること。
軍事化は、開発と相反する影響があるということを私たちは強調します。核兵器に政府の予算を使うことは、限られた資源を奪っていくことです。これらの資源を軍事ではなく人間的開発への利用に転換していくことが早急に求められているのです。私たちはインドの市民社会が開発のための軍縮を目指し尽力してきたことを認識します。同時に私たちは、今後軍事力から核廃絶および平和推進への地球規模での転換を推進するためのさらなる努力をしていくことを誓います。
核廃絶を願うヒバクシャの世界共通の叫びは、今日の世界に届かなければなりません。私たちは、この宣言を通じて、ヒバクシャの悲劇的な経験と平和への強い思いを明確な政治的行動にうつしていく決意を宣言します。これらの行動を通して、私たちは完全なる核廃絶を達成し、武力によらない平和を構築していきます。それは、平和で核のない私たちの世界の未来を求めるヒバクシャの声そしてこのプロジェクトを受け継ぐものです。
ピースボートとコーチン市は平和のために宣言します。
インド コーチンにて
2008年9月29日
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