1.ヒバクシャ証言の航海

ニューヨーク報告⑤ ヨーロッパの若者との交流

核軍縮への取り組みを世界的に後退させたとされる2005年会議に比べ、今回の2010年NPT再検討会議は、オバマ大統領のプラハでの演説や、アメリカ・ロシアの核軍縮合意などもあって、一気に核廃絶への機運が高まっています。核兵器と人間は共存できない。これからの人類の未来を決める重要な会議の成り行きを見守り、核廃絶に向けた市井の熱い思いを伝えるべく、各国政府代表に加えて、世界中から大勢の市民平和活動家がニューヨークに集結していました。5月3日の本会議開会に先立って、4月31日・5月1日には国際NGO会議が、5月2日日曜日には、国際平和マーチと集会が開かれ、18,000人が参加したといわれています。日本からも、約2000人が、これまでの平和活動の成果を携えて渡米しました。

ヨーロッパからも、フランスをはじめ、ドイツやイタリアなど各国から大勢の平和活動家達がニューヨークに駆けつけています。そのなかでも、BANg Europe(核兵器禁止ヨーロッパ若者ネットワーク)は、ヨーロッパで平和活動を行う若者たちのネットワークです。メンバーの中には、4月末にニューヨーク入りしてから1ヶ月以上滞在し、毎日 NPT再検討会議に関わる活動に参加している人もいます。22日の日曜日には、BANgメンバーとヒバクシャが、会議室ではなく、マンハッタン島の中央、高いビルの谷間にあるブライアント・パークでカジュアルに語り合う機会を設けました。

ピクニックテーブルの周りに集まった若者達と自己紹介をした後、2つのテーブルごとに、被爆証言を聞きました。盆子原国彦さんのお話は、原爆が落ちた 1945年8月6日とその翌日7日の記憶にとどまらず、現在ブラジルで行っている竹の植林による環境保全・再生の取り組みにおよびました。午後のひととき、写真も交えてのお話には、原爆という悲惨な体験の後、その影響を心身ともに受けながらも、それをバネにして人生を切り開いてこられた力強さと、ご自分の周りに対する慈しみの心がにじみ出ていて、深く参加者の心を揺さぶったようでした。塚本美知子さんのテーブルでは、被爆後16年後に重複ガンで亡くなられたお母様についてのお話から、長年続く放射能の影響に話が広がり、現在危機感が高まっている劣化ウラン弾の核被害について語り合っていました。ヨーロッパの青年平和活動家達のまっすぐな目が印象的な午後でした。

ピースボート ヒバクシャ地球一周 証言の航海-NY10
5月の新緑の中、ヨーロッパの若者たちと一緒に

(小松真理子)

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