7.おりづるプロジェクト・オンライン

アメリカ人である私も、この歴史上の出来事を人間の視点から考えることが大切

1月30日、第13回目のオンライン証言会が開かれました。
アメリカの大学の同窓である約10名の参加者の皆さんと、少人数ながらもそのぶん参加者ひとり一人とのつながりを感じられるような、そんな意欲あふれるセッションとなりました。

憎む相手は敵ではなく、戦争そのもの ー。

今回の証言をしてくださったのは、生後8カ月の時に広島で被爆された近藤紘子さん。
英語が堪能な紘子さんは、今回英語でご自身の体験を語ってくださいました。

大らかで、表情から心のあたたかさがにじみ出るような紘子さん。この出来事が遠い昔の話だと感じさせないような口調で、私たちの心に直接語りかけてくれました。

この日私たちに伝えてくださった中でとても印象に残ったエピソード。
それは、原爆を落としたアメリカ兵を、
“いつか必ず見つけ出し、やっつけてみせる。”
子どもながらにそう決心した紘子さんの心が、変わったときのお話でした。

1955年、紘子さんが10歳のとき、原爆を投下したエノラ・ゲイに乗っていた元アメリカ兵の話を聞く機会がありました。
「原爆を落としたことについてどう考えているか?」
その質問に彼が答えたことは、今まで紘子さんが心に抱えていた憎しみを解放すものでした。

「原爆が落ちた後、一瞬にして消えてしまった広島を上空から見下ろしたとき、
あぁ、自分はなんてことをしてしまったのだ…そう思わずにいられなかった。」
彼の目からこぼれる涙を見て、
“そうか、彼も、私と同じひとりの人間なんだ。憎むべき相手は彼ではなく、戦争そのものなんだ。”
自分の今までの見方が変わった瞬間だった、と教えてくれました。

穏やかな語りのなかでも、揺るぎない強い想いがある紘子さんの言葉はとてもパワフルで、そんな紘子さんのお話に私たち参加者は当時の情景を思い浮かべながら聞き入りました。
「次世代を担うのは今の若者たち。未来の大きな希望である彼らのことを信じています。」

紘子さんのお話のあと、参加者からはたくさんのコメントや質問が寄せられました。

「原爆投下は正しかった、という他国でなされている誤った教育をどう考えるか?」
との質問に、紘子さんは次のように答えました。

「たくさんの人に被爆者の生の声を実際に聞いたり、そして何より実際に広島や長崎を訪れてほしい。直接その場所を訪れることは見聞きする以上のもの、そこで感じたことは絶対に忘れないはず。」

高校で教師をされているクリスティさんは、「若い生徒たちにとって、資料館に行って実際に映像や原爆によって破壊された当時の生活用品などを見ることは、彼らの心になにかはっと気づかせるものがある。」と、実際に目で見ることの大切さを話してくれました。

アドヒナブさん(アメリカ出身)は、
「紘子さんの話を聞いてとても強く心を打たれました。
原爆が被爆者に与えた実際の影響について、今まで少ししか知らなかった。
でも、紘子さんに起きたことを聞いて、核兵器がどれだけの苦痛や痛みを人々に、そして私たちの社会にもたらすかがわかった。とても貴重で印象的なお話でした。」

ニコラスさん(アメリカ出身)は、

「アジアで教育関連の仕事をしているので、広島に生徒を連れていったこともあります。そして、トラウマになった経験も聞いたことがありました。直接お話を聞くことは、聞く者の心に訴えかけ、何をすべきかを考えさせます。紘子さん個人の話には感情があり、それは聞いていた私にも強く響きました。これから何をすべきか考えています。
今回紘子さんの話を聞いて、歴史上の出来事を人間の視点から考えることの大切さを感じました。」

最後に、「私たち若い世代が、被爆者の方々をサポートするためにまずどんなことから始めたらいいか」との問いに、紘子さんは次のようなメッセージを私たちに残してくれました。

「この世界には核兵器は一つもいらないと、多くの人とシェアすること。
今ではたくさんのヒバクシャが当時のことを語ってくれているが、皆どんどん年をとっている。だから、今、耳を傾けてほしい。
たくさんの若い人達が熱心に学ぼうとしている姿、それは私にとって大きな希望です。
私たちが声をあげていかなければ。」

“Yes, we can do it!”
若者たちに負けないくらい力強い紘子さんのこの言葉に、私たちが反対に励まされ、勇気をもらいました。
証言をして下さる被爆者の方たちとともに、私たちも一緒に出来ることをやっていきたいと、改めて強く感じました。

文:高尾桃子

編集:渡辺里香

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