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「復讐」から「許し」へーフィリピンのミリアム大学の学生と共にー

8月23日に38回目となる証言会が、フィリピンのミリアム大学の主催で行われました。今回、企画と受け入れをして下さったのは、GPPAC(武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ)のメンバーで、同大学平和教育センター長であるロレータ・カストロさんでした。当日は、学生をはじめとする300人を超える多くの人が参加してくださいました。

開会の挨拶をするロレータ・カストロさん

「復讐」そして「許し」

今回、証言をしてくださったのは、1944年生まれ、当時生後8ヶ月で被爆を体験した近藤紘子さん。証言は全て英語で行われました。その中でとても印象に残っているのは、証言会の中で度々登場した「復讐(revenge)」、「許し(forgive)」という言葉と、原爆を投下した爆撃機「エノラ・ゲイ」の副操縦士とのお話でした。

近藤紘子さん

紘子さんは、幼少期に原爆により変わり果てた姿になった多くの少女を見てきました。変形した顔や、自分の髪の毛を櫛でとかしてくれた少女の溶けた手であったりと、幼少期の記憶としてはとても壮絶なものです。そして「いつか大きくなった時には、私がお姉さんたちのかたきを討つんだ」と幼いながらに決心していました。

そんな紘子さんにとって、1995年の5月11日は決して忘れることのない日になりました。当時10歳だった紘子さんは、アメリカのTV番組に家族と一緒に出演して、原爆を投下した飛行機の副操縦士ロバート・ルイス大尉と対面することになったのです。番組の中で「原爆を投下した後どのように感じたか」という質問をされたルイス大尉は、「燃え上がる広島を見下ろして、、、、おお、神よ。我々はなんてことをしたんだろう、と思いました」と言って声を詰まらせました。「私は彼のことを悪い人であり、モンスターだと思っていた。でも彼も同じ人間なんだ」と彼の目から涙が溢れたのを見たときに感じたそうです。番組が終わると紘子さんは彼の隣りに立ち、彼の手に触れました。大尉は強く握り返してくれたそうです。その瞬間、本当に憎むべき存在は、彼ではなく、戦争なのだと学んだと話していました。

実際に目の前で、大尉も一人の人間であることを認識したことで、幼いころから胸の中に強く秘めていた復習の気持ちは変化したのだと感じました。当時の様子を涙を浮かべながら語る紘子さんの姿を目にし、画面から目を離すことができませんでした。

学生たちの想い

当日は、zoomのチャットで感じたことや質問など多くのコメントが学生から多く寄せられました。絋子さんの証言を聞いた後に「軍縮や非暴力といった紘子さんの使命を強く信じています」と感想を述べてくれたり、「私たちは誰の安全を守っているのでしょうか?」という質問もでました。「SNSを利用したキャンペーンや、核兵器禁止条約批准のための上院へ手紙を書くといった若者主導の取り組みが導入されました。このキャンペーンの結果、今年2月21日にフィリピンは核兵器禁止条約に批准する53番目の国となりました」と語ってくれた学生もいました。

最後に、核兵器禁止条約に批准をしたフィリピンを祝福する動画(大学生が作成)が流されました。学生の1人は、「核兵器禁止条約批准おめでとうございます。私たちの国がついに核兵器禁止条約に批准をし、核のないより安全で明るい未来という共通目標に近づいたことをとても嬉しく思います」と述べていました。

参加してくださった方々(一部)

 

証言会を通して

今回の証言会を通して、戦争において、加害者と被害者とは何か、私たちは今何をしなけれなならないのかともう一度考えるきっかけになったと感じています。また、国を超えて、多くの人が同じ問題に目を向け、達成感を感じていることに喜びを感じるとともに、自分も同じ世代として何かできることはないかと刺激を受ける機会にもなりました。
「許し」ということは、戦争に限らず私たちの日常生活にも通ずるものであると思います。許すという行為は決して簡単なことではありません。ただ、憎しみ・憎悪といった負の感情を持ち、時に復讐という行為に走ってしまう前に、一度相手に寄り添うこと、相手を知ろうとすることが何か良い変化に繋がるということもあるのではないでしょうか。

300人を超える人が参加をし、証言を聞き、同じ問題について考える有意義な時間となりました。直接会える時には、一人一人に大きなハグをしたいとおっしゃっていた紘子さん。コロナ禍で対面という形は難しくなりオンラインという新しい形でしたが、絋子さんの温かい言葉が、私たちは心で繋がっているのだと強く感じさせてくれるものになったと感じています。

文:石倉美宝
編集:渡辺里香

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