7.おりづるプロジェクト・オンライン

被爆者の経験は忘れられないだろうか?~ギリシャの学生からの質問

2022年5月24日、ギリシャのパンテイオン大学と56回目のオンライン証言会を開催しました。今回主催してくださったのは、同大学で国際人道法を教えているダニエラ・マリア・マロウダ教授。ダニエラさんは、国際法協会の核兵器、不拡散と現代国際法委員会(仮訳/the Committee on Nuclear Weapons, Non-Proliferation and Contemporary International Law in the International Law Association)のギリシャ代表でもあります。20名以上の学生と共に「1945年に起こったことだけでなく、その後の被爆者たちの核兵器を完全に禁止する、なくすための取り組みを学びましょう」という声かけで会を開始しました。

今回の証言会は、ギリシャ在住のピースボート国際部スタッフのカレン・ハローズが企画・実現をしてくれました。そしてカレンには証言会の中でも、ピースボートとおりづるプロジェクトの紹介、核兵器禁止条約の歩みとギリシャとの関係などを冒頭に話してもらいました。2月から始まったロシアによるウクライナ侵攻についても触れつつ、翌月に開かれる核兵器禁止条約の第一回締約国会議への期待も共有しました。

ギリシャ在住のピースボートスタッフ、カレン・ハローズ

その後、広島で4歳の時に被爆した伊藤正雄さんから、お話を聞きました。伊藤さんは、7年前の2015年にピースボートのおりづるプロジェクトでギリシャを訪れ、当時の大統領に面会し、国会で被爆証言をさせてもらった時に同席していました。そんな繋がりも説明したため、参加者の伊藤さんの話を理解しようという姿勢を強く感じました。(伊藤さんの証言内容に関して詳しくはこちら:https://hibakushaglobal.net/2021/10/12/online-testimony_ghana

2015年にギリシャに行ったことから語り始めた伊藤正雄さん

 

国際法とは、、、

伊藤さんからのお話の後、ダニエラさんから熱意あるスピーチがされました。それは国際法を学ぶ学生にいま改めて伝えるメッセージでした。「国際法はニューヨークやジュネーブの国際会議で決められるものではなく、我々の日常生活、夢や将来を変えるもの。そして国際法の知識をもって政府に訴えていくことが重要」と。そして、「ギリシャもまだ核兵器禁止条約に署名していません。これはとても残念なことです。私たち一人一人が何かできることを追求するべきです。核兵器が世界に1万3千以上も現存すること、そして米露は多くの核弾頭をすぐにでも発射できる状態で持っていることを改めて考えなくてはなりません。ロシアのウクライナ侵攻は私たちが世界の平和への考えを変えることができるか、を問うています。特に核兵器保有国の3か国は私たちが存在するヨーロッパにあるのです。来月のウィーンで開かれる会議に対して何ができるか、が問われています。そして伊藤さんがおっしゃったようにG7が来年(2023年)広島で開かれるということは大変重要なことです。」と語りました。

国際法について熱く語る、ダニエラ・マリア・マロウダさん

被爆者が少なくなる中で、経験が忘れられないだろうか?

参加学生の一人からは、「原爆被害に人間の顔を感じました。それを思い出させてくださったことに感謝しています。ロシアのウクライナ侵攻は理性的なものとは思えないし、現在目の当たりにしていることには残念で仕方ありません。被爆者の数は残念ながら少なくなっています。被爆者の経験や声は少なくなっています。国や政治家が人間に対しての被害を覚えていられるのだろうか?忘れられないか?と心配になります。どう思いますか?」とのコメントと質問が出ました。

カレンからは、「だからこそ、このプロジェクトが重要なのです。」と。「核兵器禁止条約の成立によって、核兵器が違法化したということ、そして核兵器製造企業や産業への投資引き揚げなどの動きがあることによって、私はとても楽観的。そうじゃなきゃ。」と学生に返答しました。

伊藤さんは、同じく証言活動をされていた先輩被爆者から言われたことを引き合いに出して説明しました。「私たちのような悲惨な体験は私たちだけで充分。世界中の他の誰にも同じ経験はして欲しくない。そう思うから証言活動を続けています。原爆を作ったのも人間、使ったのも人間。人間は忘れやすい生き物。忘れたら必ず同じ過ちを繰り返すでしょう。忘れないために、私たち被爆者は証言活動をし続けなければなりません」と。それ以来、伊藤さんはこの言葉を胸に証言活動に励んでいるそうです。そして、「現存する核兵器が何かの理由で意図的、偶発的にでも爆発したら、その国はおろか、地球が滅亡する可能性があることを覚えていましょう。人類の英知を集めて、戦いのない世界をつくる方向に思考を軌道修正しないといけないと思います。」と学生に話しました。

次の学生は、理性的ではない為政者たちに何十億の人の命がかかっていることに恐怖を感じたことを共有しました。その次に出た質問は、ギリシャは日本から遠いがどのように情報を得たらよいのか?というものだったので、オンライン資料館ツアーや世界核被害者フォーラムなどを参考文献の一部として紹介しました。

無関心にならないで

伊藤さんから学生への最後のメッセージは「無関心が世界を、民主主義を滅ばします。そして戦争に向かわせます。若い人たちに、世界のこと、政治に関心を持っていてほしいです。」というものでした。

ダニエラさんは、無関心にならないことを誓ってこの会を終了しました。

文:渡辺里香

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